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フェレットのリンパ腫

フェレットのリンパ腫
 
フェレットは元々ヨーロッパケナガイタチを家畜化されたものとされており、現在は全世界に愛好家が存在している人気なペットです。とても好奇心旺盛で遊び好きな性格な彼らですが、いたずらなどをして人を困らせることもしばしばあります。
また、インスリノーマ、副腎疾患、リンパ腫など病気が多いことでも知られています。
今回はそんなフェレットのリンパ腫について獣医師が解説していきます。
 
  1. リンパ腫とは
     白血球の内のリンパ球という細胞が腫瘍化し、コブ(腫瘤)を形成したものをリンパ腫と言います。似たような腫瘍で、白血病がありますが、腫瘍化した造血細胞が骨髄の中で増殖し、血液中に癌細胞が出てくる状態になることを指します。リンパ腫にはどこで癌細胞が増殖するかによっていくつかのタイプがあります。全身のリンパ節で増えるタイプ(多中心型)、消化管で増えるタイプ(消化器型)、縦隔の中、気管、脳、脾臓、肝臓等、様々な部位で増える可能性があります。フェレットでは多中心型と消化器型が多く報告されています。
  1. リンパ腫の疫学
     フェレットのリンパ腫は2-6歳での発生が多く、前述したとおり多中心型と消化器型が多く報告されています。比較的若齢では多中心型が多いとされており、消化器型は高齢の個体で多いとされています。性差は無いとされています。
  2.  リンパ腫の症状
      リンパ腫の発生部位により症状は異なりますが、共通している非特異的な症状は、食欲不振・嗜眠・体重減少です。時に無症状なこともあります。
      
  3.  リンパ腫の検査
   リンパ腫の検査としては身体検査を行ったうえで、①血液検査②X線検査③超音波検査④細胞診検査を実施します。
  • 血液検査:貧血や血小板減少が出ることがあります。過去のデータでは貧血はリンパ腫の内の66.7%、血小板減少症は63.6%と言われています。
     また、犬や猫でも認められる高カルシウム血症がしばしば観察されます。高ガンマグロブリン血症も一つの特徴ですが、どちらもあまり特異的ではないと言われています。
  • X線検査:主に胸骨・前縦隔・気管気管支リンパ節などの体腔内リンパ節・その他腫瘤性病変・胸水・腹水などの確認を行います。
    これだけでリンパ腫の診断は行いませんが、病型の分類やその他の所見が無いことを確認するためにも必要となります。
  • 超音波検査 :主に体腔内リンパ節や腫瘤性病変の確認のために行います。また、細胞診検査を行うための針生検のガイドとしても重要な検査の一つです。
  • 細胞診検査:リンパ腫を確定するための検査です。リンパ節、もしくは腫瘤性病変に針を刺すことにより細胞を採取します。その細胞を見ることにより診断を下します。リンパ節の細胞診は判定が難しいことが多く、細胞診の専門の獣医師に検査を依頼することが多いです。そのためすぐには結果が出ない事もあります。
    また、部位によっては大量に出血する可能性があるため細胞診が行えないこともあります。その場合は全身麻酔下で開腹し、直接生検を行います。
5リンパ腫の治療

  腫瘍の治療に関しては①外科療法②化学療法(抗がん剤)③放射線療法が基本的な治療方法ですが、リンパ腫に関しては②の化学療法が有効であると言われています。発生している部位によっては①外科療法+②化学療法の組み合わせが必要になることがあります。(集学的治療法)
  化学療法を実施する場合は、1種類だけではなく数種類の抗がん剤を使用する必要があります。その場合は治療に10週間以上必要です。
 
  1. リンパ腫の予後
  フェレットのリンパ腫はT細胞性リンパ腫が多く、抗がん剤の反応が悪いことがあります。しかし中には長期生存する症例もおり、リンパ腫と診断されたからと治療をあきらめる必要はありません。担当医とよく相談し、どの治療を選択するべきかしっかりと相談しましょう
 
★フェレットのリンパ腫まとめ
 ・血液の白血球であるリンパ球が腫瘍化したもの
 ・いろんな部位に発生し、発生した部位に応じた症状が出る。
 ・様々な検査を行い、部位の特定・診断の確定・病型の分類を行う
 ・治療は抗がん剤による化学療法がメインで実施される
 ・予後は悪いものもあるが、治療はしっかりと相談しましょう
 


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