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動物別症例集

腫瘍のトカゲ

腫瘍のトカゲ

トカゲなどの爬虫類にも腫瘍は出来ます。
しこり状の病変が出来ていたり、一般的な治療で改善しない症例で生検を行うと腫瘍という診断が出ることがあります。

腫瘍の治療に関してはエキゾチック動物全般でまだ確立された方法などはないのが現状ですが、
外科的に全摘出を行う方法や内科的に化学療法や放射線療法を行う方法などを検討します。

どれが一番いいか情報が少なく悩ましいところにはなりますが、話し合た上で治療法を検討できればと思いますので、ご相談ください。


エボシカメレオンの卵閉塞

この写真はエボシカメレオンの卵塞を呈したレントゲン画像であり、下腹部に見られるぼこぼこした白い塊状のものは全て卵です。

基本的にエボシカメレオンの産卵数は多く一回あたり20~80個ほど産卵しますが、それができないことによって腹部にたまった卵により消化管が圧迫され、食欲不振、腹部膨満が見られます。

原因としては、産卵行動の前に行う掘る行動を満足にさせるだけの土がない場合や、紫外線不足、低気温などの飼育環境の問題や、カルシウム不足などの食餌の栄養の偏りなどがあげられます。

内科的治療としては、カルシウム不足による機能的卵塞を考慮し、カルシウム剤の投与や、卵管収縮作用があるオキシトシンの投与などがあげられますが、一般状態が低下している場合は内科療法よりも、外科的に摘出するほうが良い結果につながる場合もあります。


ヒョウモントカゲモドキの栓子詰まり

栓子とはクロアカルサック内に定期的に溜まる黄色くて硬い塊のことで、クロアカルサックの中にあるヘミペニスの垢に汚れや膿などが溜まって栓子が形成されるのではないかと考えられます。

栓子は通常、自力で排泄されますが、排泄の機会を失うと時間とともに水分を失い、クロアカルサックに張り付いて、糞尿の排泄が困難になり、放置してしまうと、より汚れや細菌が付着され、栓子の付着部位から二次的に感染や出血、壊死し悪化してしまいます。

対処法としては、患部の付着している栓子を優しく剥離し、膿や壊死したところを除去し消毒を行い、抗生剤を投与することで細菌の進行を防ぎ、飼育環境を衛生的に保つことで傷の修復を試みます。


トゲオイグアナの皮下膿瘍

爬虫類の膿瘍の症状としてはドロドロの膿が患部に充満して炎症を起こすというより、膿がチーズ様の塊となって皮膚が破けてコブのように腫れてくることが多いです。

膿が固形で腫瘤のように存在している場合、抗生剤の内科治療だけではなくなることは少なく、基本的には外科的に摘出後、患部や飼育環境を清潔にし抗生剤の投与も行うことで再発を防ぎます。

今回のように皮膚が寄せられないような場所であれば膿瘍の摘出後、無理に皮膚を寄せて縫合しても癒合しない場合が多いので、あえて縫合はしないで感染を抑えながら自然に治癒するのを待つほうが主流とされています。


ニシアフリカトカゲモドキの機能的卵閉塞

トカゲの雌性生殖器疾患である卵閉塞の主な症状としては食欲不振、腹部膨満であり、卵殻形成によるカルシウムの大量消費のため低カルシウム状態となり、卵管平滑筋の反応を低下させ難産を助長させたり、元気の消失や神経症状もみられる場合もあります。

治療法としては、水和状態や栄養性の問題を考慮し、補液やカルシウム剤の注射を行ったり、産卵を促すためオキシトシンなどのホルモン注射を行うこともあります。
生殖器自体に異常がみられたり、内科療法が無効であった場合は外科的処置も一つの手段として挙げられます。
また治療だけでなく、産卵床は適切か、環境ストレスはないか、などの飼育者の飼育環境の見直しが最も重要な改善の糸口となる場合もあります。


ヒョウモントカゲモドキの卵胞うっ滞

卵胞うっ滞を呈した場合、卵胞による体腔内の物理的占拠により、初期には消化管が圧迫され、食欲不振と腹部膨満からはじまり、続いて体重減少、元気消失、後躯不全麻痺などがが認められます。

内科療法としては、脱水を緩和するため皮下点滴を行い、低カルシウム血症を防ぐためカルシウム剤を注射を行います。それでも改善が見られない場合は、外科的に卵胞や卵巣の摘出を試みます。

本症例は外科的摘出後も予後は良好で、食欲が戻り体重も増え元気になりました。


フトアゴヒゲトカゲの全身性微胞子虫症

微胞子虫とは、体の細胞内に寄生する微小な病原体で、分類学上は真菌(カビなど)に近い種類とされています。

フトアゴヒゲトカゲではこの微胞子虫が全身の臓器に感染し、死に至ることがあります。

微胞子虫の仲間でエンセファリトゾーンと呼ばれる種の仲間には、ウサギに対する病原性がよく知られています。
しかし爬虫類の微胞子虫症は、その病態や感染経路、人への感染性などの多くが良く分かっていません。

生前の診断法も確立はしていませんが、食欲低下、痩せてきた、元気がない、できものがあるなどの症状がみられた場合、この病気の可能性も考える必要があります。

治療は他の動物のデータに基づいた駆虫薬の投薬になりますが、爬虫類において、治療効果に対する報告はありません。
基本的に健康な個体には発症しにくい病気なので、生活環境を適切に整えて体調の悪化を避け、発症を予防することが重要になると思われます。

また、微胞子虫症は免疫低下状態の人への感染も報告があります。
適切な排泄物の処理や、触ったら手を洗う、過剰なスキンシップは避けるなど、基本的な衛生管理を徹底しましょう。


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