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動物別症例集

肝葉捻転のウサギ

ウサギの肝臓がねじれてしまう病気です。

ウサギの救急疾患の一つとしてあげられる病気の一つです。

治療として、外科処置が必要となることもある病気ですが、
症状として、良くあるウサギの胃腸うったいと似ているため注意が必要です。

食べない、元気ない、お腹痛そうなどの症状が治療していても改善なかったりする場合には
血液検査やエコーも積極的に行って肝臓の評価をすることも大事です。


ウサギのトレポネーマ症

概要
トレポネーマという糸状・らせん状の菌に感染することで起こる皮膚炎です。
ヒトの梅毒症と原因菌や症状が似ているため、ウサギ梅毒と呼ばれることもあります。
ヒトに感染することはありませんが、ウサギ間では交尾によって感染を広めていきます。
また、母ウサギから子ウサギへの接触でも感染することがあります。

症状
トレポネーマに感染後、ストレスや体調悪化などが引き金となり発症します。
発症すると陰部と口・鼻の周囲にかさぶた、潰瘍、水ぶくれなどを形成します。
くしゃみや鼻水がみられることもあります。
また、感染していても症状が出ないこともあり、他のウサギへの感染源になってしまうことがあるので注意が必要です。

治療法
抗生物質の投与により症状の改善が見られますが、完治することはなく、また何らかのきっかけで発症をくりかえしてしまいます。
一度発症してしまったウサギさんは残念ですが繁殖に供さないことが、病気の蔓延防止に有効とされています。


ウサギの精巣腫瘍

ウサギの男の子も犬猫同様、去勢手術を行います。
理由は大きく二つ、「病気の予防」と「問題行動の抑制」です。

病気の予防としては、高齢になってからの精巣腫瘍の発生があります。
ウサギの精巣腫瘍は報告としてはあまり多くはありませんが、ウサギの寿命が延びるにつれて、少しずつみられるようになってきています。
治療は手術になりますが、高齢になってから発症するため、他の病気によって手術ができない可能性があります。また、ウサギの精巣はひっくり返して見なければ外から見えにくく、見つけた時は手遅れになっていたというケースも考えられます。

もう一つは、問題行動の抑制です。
去勢していない男の子は縄張り意識が強く、自分の縄張り内に尿や糞でマーキングをして回ります。時には飼い主さんの足にスプレー(尿をひっかけること)をする場合もあり、室内飼いの場合に問題になります。
また、多頭飼いの場合オス同士は縄張り争いが、オスメスでは望まぬ妊娠のリスクがあります。これはウサギさんにとって大きな精神的ストレスですし、大きな怪我の原因にもなりえます。

ウサギの麻酔は危険という認識がありますが、去勢手術は短時間で終わる手術なので、それほど大きな負担はかかりません。また、近年はウサギに使いやすい麻酔薬や、麻酔の安全性を高める器具も出てきており、ウサギの手術に対するハードルが以前より低くなってきています。

去勢手術は、若く元気な時にするのが一番低リスクです。メリットとデメリットをよく考えて、一つの選択肢に入れてあげるといいのではないでしょうか。


ウサギの軟部組織肉腫

軟部組織肉腫とは、悪性腫瘍(いわゆる「癌」)の中で、似た挙動を示すグループの総称です。

元々の細胞の種類によって線維肉腫、脂肪肉腫、神経鞘腫、未分化肉腫などに細分されますが、腫瘍の進行の仕方や治療法などに大きな違いはありません。
ウサギの腫瘍の中では比較的よくみられるもので、手足や体幹部(胴体)、頭部など様々な所に発生します。

非常に局所浸潤性が高い(周囲に広がりやすい)一方で、転移(他の離れた臓器に飛ぶこと)はしにくいという特徴があります。

診断は、腫瘍の一部を切り取って検査する病理組織検査になりますが、針生検による簡易検査でも疑わしいと判断できる場合もあります。

治療は外科摘出が第一選択です。
完全に摘出できれば完治する腫瘍ですが、少しでも細胞が残ってしまうと再発を繰り返し、治療が難しくなります。そのため、手術の際には腫瘍だけでなく、周りの正常な組織を含めて広く切除することが重要になります。もし手足に発生した場合は、完全切除のために断脚も必要になります。

完全に摘出できなければ、抗癌剤や放射線治療が選択されますが、その場合完治には至りません。

どちらにしても大きな手術となり、断脚の場合は足が一本なくなることになります。
そのため手術を躊躇われる方も多いですが、私たちの想像以上にウサギさんたちはそういった体の変化に上手く適応してくれます。

腫瘍がとりきれるのか、とった術後の後遺症はどんなものが考えられるのか、しっかり獣医師と飼い主さんが話し合うことが大切です。


ウサギの歯根膿瘍

歯根膿瘍(しこんのうよう)とは、歯の根っこの部分に細菌が入り込み、大きな膿瘍(いわゆる「おでき」)を作る病気です。
根尖膿瘍、根尖周囲膿瘍、などとも呼ばれます。

ウサギの歯に不整咬合や過長症などのトラブルが生じると、歯根部に細菌が入り込み、膿瘍を形成します。
膿瘍は、上顎や下顎にできものとして触れるようになります。また膿瘍のできる場所によっては、呼吸器症状や眼球の突出などが起こります。

ウサギの膿瘍は飲み薬では効果が見られないことが多く、全身麻酔下での切除が理想です。完全切除が難しい場合は、抜歯や排膿・消毒を行いますが、完治は難しく、長期にわたる治療が必要になります。

治療には色々な試みが報告されています。多くの場合、膿瘍を開放創(わざと傷口を開けておく)にし、自宅や病院で洗浄・消毒を繰り返します。
通常の消毒薬で治療困難な場合、殺菌作用のあるクリーム(カルシペックス®など)を注入することもあります。

一度なると完治が難しいことが多いため、予防が何より大事になります。
詳しい予防法は、「不整咬合」の記事を参照してください。


皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌という真菌(カビ)による皮膚炎を指します。犬猫だけでなく、ウサギ、ハムスター、モルモット、チンチラ、フェレット、デグー、ハリネズミなど多くの動物に感染します。

子供や高齢、また何らかの病気により免疫力が低下している動物に主に認められます。
頭部や手足から全身に広がるケースが多いです。
また、円形の脱毛が認められることが多いですが、見た目で診断はできません。かゆみがある場合もない場合もあります。

診断は、抜毛検査による糸状菌の検出や、培養検査、ウッド灯と呼ばれる特殊なライトを用いた検査によって糸状菌を検出します。
検出されない場合でも、通常の治療に反応がない場合は試験的な治療が功を奏する場合もあります。

治療は、抗真菌薬の内服薬や軟膏、薬用シャンプーによる薬浴などがあります。治療は長期間にわたる可能性もあり、自己判断で中止しないことが重要です。

また、皮膚糸状菌症は人獣共通感染症(ズーノーシス)の一種であり、人にも感染します。人間ではリングワームと呼ばれる円形の赤い湿疹が特徴的です。
皮膚病の子がお家にいる方で、上記の症状が出た場合は特にこの病気を疑います。飼い主さんは、皮膚科の受診をお勧めします。


ウサギの胃消化管症候群(毛球症)

草食動物であるウサギは、食べた草を盲腸の中で発酵させて栄養を作り出しています。
そのために、常に胃腸を動かしていることを前提とした体の仕組みをしています。

ウサギは一方で、環境ストレスや体調の変化で胃腸の運動が低下しやすい側面も持っています。
中には急激に胃拡張を起こして他の臓器や血管を圧迫したり、胃腸に穴が開いてしまう場合もあり、最悪そのまま死に至ります。

食欲や胃腸運動の低下には、主に以下のような原因が考えられます。
・自分の被毛が胃や腸でフェルト状に絡まることで、胃腸の閉塞を起こす(いわゆる「毛球症」)。
・環境の変化などのストレスにより、胃腸の運動が低下する。
・ペレットや野菜メインの食生活による、食事内の繊維質不足。
・他の病気や痛みにより、胃腸の運動が低下する。
・異物の誤飲による腸閉塞。

通常は注射や飲み薬での治療がメインになりますが、口や鼻からチューブを入れて胃の減圧をしたり、緊急手術が必要な場合もあります。

普段から高繊維の食事(牧草)や、環境ストレスへの配慮、こまめなブラッシングなど、予防を心掛けましょう。
特に換毛期は調子を崩しやすいので、予防的な薬の投与もお勧めです。


食欲がなくなったウサギは病態の進行が急なので、少しでも様子がおかしければ速やかな受診をお願いします。


ウサギの子宮疾患

ウサギは非常に子宮疾患が多い動物で、5歳以上のメスのウサギの約60%が子宮疾患になると言われています。

子宮内膜増殖症や腺癌が多く、その他にも子宮蓄膿症や子宮水腫など多様な病態が認められます。
子宮腺癌では、対応が遅れると肺や肝臓へ転移し、亡くなってしまいます。
また癌でなくても、出血多量を起こして命に関わることもあります。

症状としては陰部からの出血で発見されることが多いですが、ウサギの尿は正常でも色素により赤い場合があるため注意が必要です。
また、ウサギはなかなか体調の変化を表に出さないので、発見した時にはかなり病態が進んでしまっていることも珍しくありません。

子宮疾患は避妊手術により予防できます。
ウサギの麻酔はリスクが高いという話もありますが、前述のように、メスのウサギはそれ以上の高率で子宮疾患になります。
今はウサギの麻酔も進歩しており、麻酔を安全に行う専用の道具も開発されています。

健康な若いうちに、なるべく早期の避妊手術をオススメします。


ウサギの不整咬合

ウサギに最も多い病気の一つが、歯に関連する問題です。
ウサギの歯はすべて常生歯(一生伸び続ける歯)であり、通常は食事の際にほどよくすり減り、ちょうどよい長さを保っています。
しかし噛み合わせが悪い、いわゆる「不整咬合」になると、上手くすり減らずに不適切な方向に曲がって伸びてしまいます。

来院理由で一番多いのは、臼歯(奥歯)が棘のように伸びて口の中に刺さってしまい、痛くて食べられない状態です。食べ物の好みの変化や、よだれ、歯ぎしりなどが主な症状です。重症の場合は、痛みと食べられないことにより腸が動かなくなり、急性の胃拡張が起きて命に関わる場合もあります。

また、白い目ヤニが多くなったり(鼻涙管閉塞)、口周りに膿が溜まって腫れてくる(歯根膿瘍)といった症状も、主に不整咬合に関連しており、これらの病気は一度なってしまうと治療が困難なことが多いです。

以下に、歯のトラブルの原因・予防・治療法を簡単にまとめました。

【切歯(前歯)】
○原因
生まれつき噛み合わせが悪い(特にネザーランドドワーフに多い)。ケージなど硬いものを齧ることが原因の事も多い。
○予防
ケージなどを噛ませないこと。かじり木はものによっては悪影響になる場合も。
○治療
軽度なものでは歯切りで強制することもあるが、定期的な歯切りが必要になる子が多い。

【臼歯(奥歯)】
○原因
牧草(繊維)の摂取不足が主な原因。遺伝的になりやすい子や、切歯の不整咬合から派生する場合もある。
○予防
牧草をしっかり食べてもらうことが最大の予防法。繊維の硬く、栄養バランスのよい「チモシー1番刈り」が推奨される。
アルファルファなどは成兎には栄養バランスが悪く、同じチモシーでも3番刈りになると繊維質が減るのであまり好ましくないと言われている。また、ハードタイプのペレットは、奥歯で砕く時に歯根に負担がかかるため、現在では推奨されていない。
○治療
定期的な歯切り。軽度であれば無麻酔で行うこともあるが、重度な場合は全身麻酔をかけての処置が必要。


モルモットやチンチラなど、ウサギと同じように完全草食の動物は、ウサギと同様に歯のトラブルが多くみられるので、注意が必要です。


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